バックナンバー  2008年10月  2008年11月 
 

2008年12月17日(水)

改正がないのに改正し、 改正がないまま改正を改正する
 
 

リース契約の税務スタンス

 平成20年4月以後のリース契約については売買があったものとして処理することが法人税法・所得税法での改正法の定めです。すなわち、リース契約時に、リース債務と同額のリース資産(含消費税)を認識することが必要になりました。

 ただし、リース期間定額法による償却費とリース料とが一致するので、会計的には売買処理ではなく賃貸借処理のままであったとしても、リース料を償却費とみなす旨の規定を置いて所得計算に影響の出ないようにしてありました。

 しかし、このことで、税務上でも賃貸借処理が容認されたということになるわけではありません。税務上は、あくまでリース債務と同額のリース資産(含消費税)を認識し、それを償却していくというスタンスを堅持しています。


法改正をしなかった消費税法

 消費税法は、法人税法・所得税法準拠主義を旨としているとの理由で、これに関する法改正をしませんでした。

 賃貸借処理での月々のリース料は法人税法・所得税法上は償却費なのですから、物やサービスの対価ではありえません。それで、消費税法においても、リース料は償却費とみなすことになります。

 月々の償却費とみなされる以上月々のリース料の中に消費税が含まれると解釈することは困難ですから、独自の法改正をしなかった消費税法にとっては、法人税法・所得税法のような賃貸借処理の実質容認の実務配慮型の税務処理をする余地はありませんでした。



依拠した論理のその場しのぎの変更

 ところが、去る11月14日に日税連が、11月21日に国税庁が、賃借処理をしているリース取引については、リース契約時に売買処理としての消費税一括控除をするか、リース料支払時の課税仕入として消費税の分割控除をするか、を任意に選択しても差し支えない、との見解を公表しました。

 ようやく実務への配慮がなされたことは歓迎すべきことなのかもしれませんが、それならなぜ4月以前に公表しなかったのか、それに相変わらず何の法令上の改正をしないままでの取扱い変更で、いままで言ってきたこととのつじつまが合っていないことを何と説明するのか、疑問が残る所なので素直に喜べないところです。