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◇今週のご相談◇
  〜労務に関する Q&A 第11回〜
  最近始業時刻ギリギリに出勤
 
 

 当社では、始業時刻に業務ができるよう、その10分前までには出勤すること、従来から徹底していました。ところが、最近始業時刻ギリギリに出勤する者が出てきたため注意したところ、始業に遅れていない以上問題ないはずと反論されました。法律上はどのような解釈となりますか。


 

 通常は、始業時刻をもって労働時間の始まりと考えられますが、ご質問のように、始業時刻とは別に出勤時刻が定められている場合、労働基準法上の労働時間はどの時点からかという問題が生じます。

  労働基準法上の労働時間とは、『使用者の指揮命令下に労働力を提供している時間』を意味します。よって、始業時刻前でも労働の実態があれば、労働時間として法の規制の対象となります。

  始業10分前の時間帯に具体的な業務や打ち合わせ等が予定されておらず、単に始業時刻から業務が開始できるよう余裕をもって出勤するようにという意味にすぎないものであれば、労働基準法上の労働時間とはいえないでしょう。しかし、出勤時刻に遅れた者に対して遅刻としての賃金カットやその他の不利益処分が予定されていたり、労働というに足りる行動(例えば全員参加が強制される業務、打合せ等)が予定されている場合には、労働基準法上の労働時間とされる可能性が高くなります。

  基本的には、会社の始業時刻の定めは労働時間の概念と一致していることが望ましいと思われます。したがって、仮に10分前出勤を義務付け、徹底したいのであれば、その時間を労働時間として位置付け、賃金の対象とし、時間計算の対象とすることが適当でしょう。

  また、労働時間として取り扱わないならば、10分前出社はあくまで従業員の心構えとして要請するに止め、義務付けや強制は避けるべきでしょう。