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 〜相続〜
  相続人に対する譲渡制限株式の売渡請求の制度
 

〜 相続人に対する譲渡制限株式の売渡請求の制度 〜

 

■制度の趣旨

 株主に相続が生じた場合、株式は当然に相続人へと移転してしまいます(譲
 渡制限条項が付けられている株式でも同様で、歯止めがききません。)。
  このように株式は、相続によって徐々に分散していくことが想定しえます。
  こうした事態の打開策の一つとして、会社法では新しく「相続人に対する譲渡
 制限株式の売渡請求の制度」が創設されました。この制度を導入することに
  より、株主に相続が生じ、株式が相続人の手に渡っても、当該相続人の同意
  なく、会社の一方的な請求で買取回収することが可能となるため、相続によ
  る株式の分散を食い止める有効な手段の一つとなります。


■制度導入の方法

  この制度の対象となるのは、相続による株式分散の策を講じる必要性の高
 い、「譲渡制限がついた株式」のみです。 導入には、定款に“相続売渡請求 規定(記載例:「当会社は、相続その他の一般承継により本会社の株式を取
  得した者に対し、当該株式を当会社に売渡すことを請求することができる。」)
  ”を追加する定款変更が必要であり、この定款変更は株主総会の特別決議
  をもって行います。


■売渡請求の方法

  会社が、相続人からの買取を希望する場合は、株主総会の特別決議で承認
  を得た後、「相続があったことを知った日から1年以内」に売渡しの請求を行
  います。尚、この買取には財源規制があり、原則として分配可能額範囲内で
  行う必要があります。


■リスク・ 注意点

  1. オーナー支配権剥奪のリスク

    この制度は当然にオーナー保有の株式もその対象となり、また売渡請求する際の株主総会決議においては、当該相続人が議決権を行使できないことから、オーナー支配権を剥奪される危険性があります。

  2. 高額な買取価格となる可能性

    買取価格は、原則、双方の合意によって決めますが、必要に応じて裁判所を介入させることができます。そして、裁判所は価格決定にあたり、「当該会社の資産状態その他一切の事情」を考慮するよう定められていることから、場合によっては、「純資産」を考慮した結果、 買取価格が思わぬ高額となる可能性があります。

   ※実際のご採用にあたっては、上記のリスク及びその回避方法も含め、
    十分な検討が必要です。専門家へご相談下さい。