根抵当権の債務者の相続(その1/債務者1名)
〜根抵当権の債務者の相続 (その1/債務者1名の場合)〜
【事例】
被相続人 A
相続人 A1、A2、A3
不動産所有者 A(相続によりA1が取得)
根抵当権の債務者 A
根抵当権者 X銀行
【質問】 根抵当権の債務者になっているAが死亡したときに、根抵当権について必要となる手続(登記)は?
【回答】
考えられる手続は以下の3つ。(以下の順序で)
但し、事例によって登記する場合としない場合があるので、銀行に事前にご確認ください。
- 債務者の相続登記
- 指定債務者の合意の登記
- 免責的債務引受と被担保債権の範囲の変更登記(任意)
(全て、登記権利者はX銀行。登記義務者は所有者A1)
【条文】
民法398条の8 (根抵当権者又は債務者の相続)
- 元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に取得する債権を担保する。
- 元本の確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務を担保する。
- 第三百九十八条の四第二項の規定は、前二項の合意をする場合について準用する。
- 第一項及び第二項の合意について相続の開始後六箇月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなす。
【解説】
相続開始時点では、民法398条の8第2項前段により、相続時点の債務が担保されます。 (この相続時点の債務は、相続人A1.A2.A3が相続により承継する。→1)の登記)
相続開始後に、相続人のうちのA1とX銀行との取引がおこなわれる場合などに、A1と銀行との今後の取引も担保させたい場合は、398条の8第2項後段により、根抵当権者と根抵当権設定者との合意でA1を指定し、その登記をする必要があります。(→2)の登記)
そして、この指定債務者の合意の登記は相続開始後6ヶ月以内にしなければなりません。6ヶ月以内に指定債務者の合意の登記をしないときは、相続開始の時に元本が確定したものとみなされます。(民法398条の8第4項)
また、A1がX銀行との債務(相続前も後もすべて)を全て負担する場合には、相続開始時点の債務(A1、A2、A3が承継)について、A1のみが負担するとする、免責的債務引受の手続が必要です。(→3)の登記)
(A2、A3が承継した債務をA1が免責的に引き受ける。)
この手続は、銀行によって異なります。