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◇新着法務行政情報◇
 〜新会社法〜
 会社法に関する法務問題4
 株式会社役員の任期の伸長
 

株式会社役員の任期の伸長

 

 今回は施行後ただちに検討すべき事項として、株式会社役員の「任期の伸長 (普通より、のばすこと)」をみてみましょう。

  1. 株式会社は、所有と経営の分離が原則。したがって役員は定期的に株主のチェックを受けます。取締役であれば2年、監査役であれば4年で任期が満了して再選するかどうかを株主総会に諮る。これが原則です。
    そして株式会社の役員は、登記事項ですから、任期満了、および選任をそれぞれ登記しなければなりません。前後がまったく同じでも登記の義務があるわけです。この登記の登録免許税は3万円(資本金が1億円以下ならば1万円)です。2年に1度この支出(弁護士・司法書士に手続依頼すればさらに手数料として約5万円)が必要になります。

  2. ところが、今回の会社法では、株式会社でも一定の場合、役員の任期を最長10年まで伸ばすことができるようになりました。取締役であれば最大4回分、約32万円もの費用が節約できる計算になります。したがって、役員が今後何年もかわることがない場合など、是非今回の会社法施行を期に、株主総会で定款変更をして、任期を伸長しておくことを検討してみたいものです。

  3. そこで、まず、定款で任期伸長する場合の条件ですが、この制度を採用できるのは、非公開会社(全株式に譲渡制限のついた閉鎖的な会社)に限られます。次に、任期を伸長することのリスクですが、伸長したら最後、株主総会で解任するときに、正当な理由がないと、解任された役員は、会社に対し、残存任期分の役員報酬相当額を損害賠償請求できることがあげられます。

  4. いずれにしても任期を延ばすことができますが、伸ばすかどうかは自由であり、伸ばしたときのリスクも考慮して検討しましょう。
    一概に「出来るのだから伸ばすべきです」というのは無責任な素人発想というべきです。私見では、株主1名で、その者だけが役員である場合には、伸ばすべきかと思います。なぜならば多くの有限会社の例にならえば弊害が少なそうだからです。ただ、一点、10年後の任期満了、及びその改選登記をわすれてしまうと、次に、任期満了に気がつく機会は、ほぼ皆無ですから、最終的な懈怠の過料金が、跳ね上がりかねませんので注意が必要です。