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 〜新会社法〜
 会社法に関する法務問題3
 有限責任社員の変更登記放置の実態
 

有限責任社員の変更登記放置の実態

 

 今回は、合資会社の「有限責任社員の変更登記放置の実態と名義整理の手順」 について解説します。

 ところで、前回は、合名会社・合資会社の事業承継における組織変更手続き のニーズと、そのポイントについて述べました。
 その組織変更の前提として、よく「社員」、つまり「会社の出資者」の整理について相談されます。そこで、本稿では上記のテーマを取上げてみたいと思います。

  1. 合資会社の有限責任社員
    (1) 合資会社の出資は社員によってなされています。
       つまり社員は出資者であり、株式会社でいうところの株主といえ
       ます。
    (2) 最大のポイントは、社員の住所・氏名等が登記されているというこ   とです。ここが株主とは大きく違います。

  2. 変更理由
    変更の理由は死亡による退社(商法では社員の地位は相続されます。新しい会社法では原則として相続されません。)が多いといえます。
    無論、出資の譲渡などもありえますが、きわめて少数です。

  3. 変更手続き
    有限責任社員が、死亡した場合、「株」に相当する「出資持分」を相続人で遺産分割して終了と考えている会社が多いようです。
    しかし、それが間違いのもとなのです。
    1.(2)で述べたように、社員は登記されているので、商法にのっとり登記をしなければならないのです。

  4. 放置するとどうなるか
    変更登記を放置してしまうと、死亡した社員の地位を引き継ぐことになった者に登記を変更することが、かなり困難になる可能性があります。
    すなわち、
    (1) 合資会社の有限責任社員が死亡しますと、その相続人全員が社
       員の地位を不可分に承継して社員となります。このため相続人全
       員を一度社員として登記することになります。

    その後、

    (2) 社員である相続人全員の同意をもって、そのうちの特定の相続人
       に社員の地位を引き継がせることができます。つまり相続人全員   が合意する必要があるわけです。

    こういうことは、早くやったほうがいいということは、自明といえます。

  5. 名義の整理
    そして、万一放置してしまった場合には、有限責任社員の相続人を調査して、相続人によくよく事情を説明して、変更登記手続に協力してもらわないといけません。