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 〜新会社法〜
 会社法に関する法務問題1
  所在不明株主の処置
 

所在不明株主の処置

 

 今回から、6回にわたり中小企業経営者から寄せられる商法・会社法にかか わる法務問題について、解説していきます。

 まず第1回は、所在不明株主の処置を取上げたいと思います。

 多くの企業において、事業承継が進んでいます。そして、先代の健在なときに、株主が整理されていることが望ましいのですが、それは実際まれであり、後継者にとっては所在不明株主は、安定経営の上で少なからぬ問題をはらんでいます。 そこで今回は、株式の競売制度を使って行うことができる所在不明株主の処置について、5月施行の会社法上の制度から説明します。
なお、現行法(商法)から実質的な制度の変更はない予定です。


『株式の競売制度について』

  1. 次に掲げる、3つの要件を満たすとき、会社は、株式を競売し、かつその代金をその株式の株主に交付することができる。(会社法197(1))  
    (1)当該株主が次に掲げる2点を満たすこと。   
       1) 5年間継続して通知や催告が不到達であること
       2) 5年間継続して配当を未受領であること
    (2)会社が、3ヶ月以上の期間を定めて、当該株主・利害関係人に通
      知・公告したこと。
    (3)株主から、異議申述期間中に異議が出されなかったこと。

  2. 株式の競売のほか、次の換金方法が採用できる(会社法197(2))。 
    (1)市場価格がある株式は、その価格で任意売却、 
    (2)市場価格がない株式は、裁判所の許可による売却また、この場合
      一定の財源制限を満たす限りにおいては、会社が買受人となること
      (自己株式化)も可能である(会社法197(3),461(1)六)。

  3. 競売・売却代金は当然、その株主に支払われる必要があるが、
    1.(1) 2)(配当の未受領)が要件の一つである以上、通常は株主が受領しないことは明らかである。
    したがって金銭管理の手間を省くため、売却代金を供託するのが一般的である。