養子の氏(太郎さんの氏)
養子縁組をすると、養子は養親の戸籍に入り、養親の氏を称することになります(戸籍法§18、民法§810)。このとき、養子が既に婚姻している場合は、その夫婦について新戸籍を編製することになりますが(戸籍法§20)、養子が婚姻によって相手方の氏に改めている場合には、引き続き縁組前の氏を名乗ることになり(民法§810但書)、新戸籍は編製されません。
ご質問の場合、山田太郎・花子夫妻は、婚姻の際夫の氏を選択しており、太郎さんは婚姻によって氏を改めていませんので、河野スエさんと養子縁組することにより、河野太郎となり、河野太郎を筆頭者とする新戸籍を編製することになります。養子の配偶者の氏(花子さんの氏)夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称します(民法§750)。この規定は、婚姻時のみ有効となるわけではなく、婚姻後もひき続き有効となります。よって、婚姻の際夫の氏を選択した妻は、婚姻中に夫の氏がかわることがあれば、それにともない氏がかわることになります(民法§750)。ご質問の場合、花子さんも河野太郎を筆頭者とする新戸籍に入りますので、河野花子となります。
養子の子の氏(イチローさんの氏)
嫡出である子は、父母の氏を称します(民法§790)。しかし、父母の氏の変更にともない、子の氏が自動的にかわるという規定はありません。父母が養子縁組にともない新戸籍を編製した場合、父母は旧戸籍から除籍されますが、子はそのまま旧戸籍に残ることになり、氏もかわりません。氏を変えたい場合は、入籍届を市町村長に届け出る(民法§791第2項、戸籍法§98)必要があります。入籍届を届け出ることにより、両親の戸籍に入籍し、両親の氏を名乗ることができます。
ご質問の場合、イチローさんは、父親の養子縁組に伴い自動的に父母の戸籍へ入籍することはなく、河野イチローとはなりません。山田イチローのままです。
しかし、イチローさんの氏を両親と同じ河野にかえたいと望む場合には、入籍届を市町村長に届け出ることにより、両親の戸籍に入籍し、河野イチローとなることができます。