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 〜医療法人〜
 医療法人の理事の経営責任
 

医療法人Aは、金融機関と関連会社に借入れがあります。

この医療法人Aの理事であるB氏は、借入れについて債権者から責任を追及されるでしょうか。
なお、B氏は借入れについて、保証人にはなっていません。

 

医療法人の理事の経営責任

医療法人の理事の第三者に対する責任を規定しているのは、民法第44条第2項です。(医療法第68条が準用しています。)

同項は、法人の目的の範囲内にあらざる行為によって他人に損害を加えた場合には、その事項の議決に賛成した社員、理事及び履行した理事その他の代理人は連帯して、損害賠償を負うことを定めています。

今回のケースにおいて、金融機関や関連会社に対する債務が法人の目的の範囲外の業務で発生したものであるならば、それに関係した理事は損害賠償を負うことになるかもしれません。
しかし、通常業務で発生した債務であるならば特に責任を追及されることはありません。

なお、医療法人と理事との関係について条文上の規定はありませんが、株式会社等と同じく、委任契約であると解されています。

委任契約の場合には、受任者(理事)は「善良なる管理者の注意を以て、委任事務を処理する義務(善管注意義務)」を負うことになっています(民法644条)。

したがって、この義務に反して、法人に損害を与えれば、法人は理事に対して、債務不履行による損害賠償請求をすることができますが、責任を追及することができるのは債権者ではなく法人そのものですから、今回のケースには該当しないと思われます。

  参照:「医療法人の法務と税務」エヌピー通信社        
    著者 高橋茂樹・長 隆  1996年8月8日 第1刷発行