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2010年3月25日(木)

「まだ最高裁がある」とは本当か?
 
 

三審制とは言うものの・・・

 我が国の裁判では、いわゆる三審制が採られております。第一審が地方裁判所ならば、控訴審が高等裁判所、上告審が最高裁判所です。

 しかし、民事裁判は特にそうですが、ほとんどの場合では、最高裁判所に至らずに決着せざるを得ません。


事実審と法律審

 それは、第一審・控訴審と上告審における大きな違いに由来します。

 我が国の裁判では、第一審、控訴審が事実審、上告審は法律審と言われております。裁判の事実認定をするのは事実審だけであり、上告審は原審(事実審)の適法に確定した事実に拘束されるのが原則です。

 したがって、上告理由となりうるのは、憲法の解釈の誤りその他憲法違反があること、その他の特定の事由のあること、または判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令の違反があることであって、事実認定の誤りは上告理由とはなりえません。

 その一方、民事裁判での争点は、ほとんどが事実認定に関する争いです。

 例えば、貸金に関する裁判ならば返済約束の事実の有無、損害賠償請求ならば問題とされる行為自体の有無あるいは相手方の過失の有無といった事柄です。

 しかし、それらの判断に不服があっても、最高裁判所ではそれ自体を理由に上告を受け付けてもらえません。

あくまで第一審が主戦場

 因みに、民事裁判における控訴審は、第一審で集めた資料を前提として、その上に控訴審で集めた資料を積み重ねて判断するという方法が用いられています(続審制といいます)。

 すなわち、控訴審の口頭弁論は、第一審のそれの継続としてみられ、当事者は控訴審で第一審における資料を提出するとともに、新しい資料を提出することができます。

 しかし、あくまで続きは続きであり、第一審で出てきた資料が前提となり、一度判決が下されていることの重みは大きく、第一審により重点が置かれます。

 したがって、実際裁判に遭遇した場合には、あくまで第一審こそが主戦場という心構えで臨むべきです。