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2010年3月19日(金)

支払督促をご存知ですか?
 
 

支払督促とは何か?

 債権回収における法的手段の一つとして支払督促があります。支払督促とは、債権者の申立てに基づき、債務者に金銭の支払等をするよう督促する旨の裁判所書記官の処分をいいます。

 支払督促は、定義からお分かりのように、金銭請求にのみ使えます。


手続の概要

 相手方の住所を管轄する簡易裁判所に申立書を提出すると、裁判所は申立書に不備がないか等を審査します。

 審査が通れば、裁判所より相手方宛に支払督促が送達され、2週間以内に相手方から異議申立てがなければ、更に仮執行宣言付支払督促の申立を裁判所に行います。

 そして、2週間以内に相手方から仮執行宣言付支払督促に対しても、異議申立てがなかった場合には仮執行宣言付支払督促が確定し、強制執行のお墨付き(債務名義といいます)が得られます。

 もし、上記で相手方から異議が出た場合には通常訴訟に移行されることになります。

支払督促の特長とは?

 このように、支払督促は、通常訴訟のように相手方の反論も受けつつ、主張や証拠を応酬した末に判決を得る必要もなければ、公正証書のように相手方の協力を得て、公証役場で作成する必要もなく、書面審査だけで簡単に債務名義を得られます。

 また、裁判所への手数料も通常の裁判の約半分と大変安価です。支払督促は、いわば安い、早い、実効的な法的手段です。


支払督促も万能ではない

 しかし、支払督促が向かない場面はあります。

 それは、債務者の方で支払義務自体を争っている場合です。

 この場合、相手方は支払督促に異議を出すのは確実であり、通常訴訟に移行するタイムラグが無駄となりますので、むしろ初めから通常の訴訟を提起すべきなのです。

 また、異議により移行される通常訴訟は、相手方の住所を管轄する裁判所で行われます。

 お互いが同一ないし近接した地域ならばともかく、相手方が遠隔地にある場合には、相手方の裁判所に出向いて弁論期日を重ねるという大きな負担を被ります。

 このように、債権回収の手段に支払督促が有効な場面かどうかをよく検討する必要があります。