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2009年11月12日(木)

年金保険料の控除のあり方
 
 

所得計算の原則

 税法でいう所得とは利益のことで、収入から必要経費を差し引いた残額のことです。

 必要経費とは収入を得るために支出した金額のことです。

 年金収入についても必要経費相当額を差し引いてその所得を算出することになっています。

 ただし、公的年金収入については支払年金保険料を必要経費にできないことになっています。


事業主負担分社会保険料の税の扱い

 公的年金に係る支払年金保険料の半分は本人ではなく給与の負担者たる事業主が支払い、事業主の必要経費になります。

 また、それは給与所得者の将来の年金所得の受給原資になりますので、給与所得収入に含めるべきものですが、税法上はそういう扱いになっていません。

 収入は無いものと扱われ、従って年金保険料の支払いも無いものと扱われます。収入控除の扱いともいえます。


社会保険料の控除の理論的なあり方

 公的年金に係る支払年金保険料の残り半分は給与所得者本人が支払いますが、それは給与所得者に課せられた法的義務に基づく金銭負担なので給与所得の必要経費になるべきものです。

 さもなければ、事業主負担と同じく収入控除扱いにすべきものです。


所得控除にすることの不整合

 公的年金等に係る支払保険料はすべて課税所得を減額しつつ支出されているので、年金収入の必要経費にはならないことは理解できます。

 しかし、事業主負担分は収入控除扱いで、本人負担分は所得控除というのでは扱いに一貫性を欠きます。

 一貫性に着目するなら本人負担分も通勤交通費と同じく収入控除扱いにすべきです。

 必要経費性を重視するなら、事業主負担を含めすべて給与収入に計上し、給与に係る必要経費にすべきです。


問題は給与所得控除

 支払年金保険料を給与所得の必要経費と理解するならば所得控除の現制度は二重控除を制度化していることになります。

 給与収入控除が是との立場でも、現制度では給与所得控除額を過大にしているということになります。

 給与に係る必要経費でありながら実質は架空経費である給与所得控除の存在が問題解決を困難にしています。