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2009年10月29日(木)

地主・借地人・借家人
 
 

借地上の借家人の権利の不安定

 借地上の建物の借家人は、大家さんである借地人の地代滞納などのため、借地契約解除という場合に遭遇すると、建物賃借人としての権利が保護されないので、地主さんから即刻明渡し請求されることになりかねません。


不動産評価でも同じ

 この借家人の権利が地主の権利に及んでいないということは財産評価でも確認できます。

  自用地価格の評価   100%
  借地権割合      60% 借家権割合      30%  とした場合、  これが借地だったら   借地人権利価格    60%   地主の権利価格    40%
 これが貸家用土地だったら   借家人の権利価格   18%   大家の権利価格    82%
 これが借地上の貸家だったら   地主の権利価格    40%   借家人の権利価格   18%   借地人大家の権利価格 42%

と一般に評価されます。

これを分析すると

 地代収受権・担保設定権をもつ地主の権利価格は常に土地時価の40%で、家とその敷地を利用する借家人の権利価格は常に土地時価の18%(60%×30%)です。

 土地の利用者としての借地人の権利価格<借地権価格>は60%ですが、借地人が土地利用形態を自用から貸家にすると土地利用権は家賃収受権と建物敷地利用権(60%=42%+18%)とに分化してしまいます。


地主の権利価格は不変

 借家人の敷地利用権18%による侵食は、

  地主  18%×40%= 7.2%
  借地人 18%×60%=10.8%

  というように地主も借地人もその影響をうけてもよさそうですが、影響を受けるのは大家である借地人の権利価格だけです。

 借地上の建物賃借権により生ずる借家人の敷地利用権は借地人に対しては及ぶものの土地所有者の地主には及んでいないので、それが評価の計算式に反映していると言うことです。