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2007年5月2日(水)
名義書換を忘れた 「失念株」のゆくえ
 
 

 株式を譲渡して株主でなくなったにもかかわらず、配当金や新株式等の割当(以下「権利」といいます。)を受けることがあります。

 でも、何か釈然としないまま受け取っているのが実際のところです。

(1)協会で自主的ルールを定めている

 このような場合、日本証券業協会では一定のルール(統一慣習規則第2号「株式の名義書換失念の場合における権利の処理に関する規則」)を自主的に定めて処理しています。

 その内容は、@譲受人は名義株主に対して一定の手数料を支払うこと、A返還請求の期限は、当該権利が確定するための名義書換取扱最終日の翌日から起算して6ヶ月以内であること等です。

 実際に、株式所持人が名義書換を失念(意図的かどうかを問わず)して、株式譲渡人が株式分割により時価1株23万円する株式を230株相当もの割当てを受け、当該権利を5,300万円で譲渡してしまった後、真実の権利者から返還請求を受け例があります。

 もちろん裁判になり、最高裁まで争いました。

(2)割当てを受けた名義株主の主張

 失念株主からの不当利得の返還請求に対して、協会規則によるところの「返還請求の期限」が経過していることを理由に、当該権利の返還を拒否しました。

(3)最高裁の判断

 二審では、返還時の株価は1株16万円(売却時23万円)であるから、これで市場から株式を調達できるとして、これに相応する金銭で足りるとしました。

 しかし、最高裁は、「売却後株価が下がれば利得の返還義務が一部免れ、上がれば利得を超える返還義務を負い、不公平」と指摘し、全額5,300万円の返還を命じました。

(4)名義書換失念株の税務上の取扱

 譲渡人が受領したこのような失念株による配当金は、法人税法では「受取配当の益金不算入」、「所得税額控除」の適用はなく、また、所得税では「配当所得」ではなく、「雑所得」として取り扱われています。

 無用なトレブルを避けるためにも名義書換はしておくべきですね。