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2006年11月24日(金)

経済的効果は同じでも、
法律行為の違いによって天国と地獄 !

 
 

 少し大げさな表現になりましたが、事例はこうです。

 あるオーナー経営者Aさんが死亡直前に、自分の会社に対して有していた自己の貸付債権(会社にとってはAさんからの借入金)を会社に免除しました。

 もちろん、会社には沢山の累積欠損がありましたので、会社が債務免除益を計上しても法人税等の課税はありませんでした。

 この行為に対して、税務署長は、「当該行為は、自分の会社(いわゆる同族会社)だからこそ出来るのであって、まさに、その行為は同族会社の行為とみることができ、当該行為を利用してA氏の相続財産を不当に減少せしめた」として、当該行為たる債務の免除がなかったものとしてA氏の相続税額の増額更正をしました。

 これがよく言われるところの伝家の宝刀「同族会社の行為計算否認」の規定の適用です。

 しかし、原告納税者(経営者A氏の相続人)は、この税務署の処分を不服として、裁判所に控訴しました。


(1)法律行為たる債務免除

  裁判所は、「債務免除とは、無償で債権を放棄することを内容とするもので、債権者の不要式かつ一方的な意思表示であり、免除の意思表示は書面による必要もなく、口頭でも、また債権証書を返還するのなどの黙示行為であってもよい」と、そして、「法律上の免除は、A氏の単独行為であり、同族会社の行為又は計算の存在はない」として、税務署の課税処分を取消しました。

 

(2)会社と贈与契約を結んでいたら

  もし、A氏が会社と自己の債権を会社に贈与する旨の契約を結んでいたとしたら、結果として、免除と同じように会社にもたらす経済的効果は同じでありながら、税務署の課税処分が認められたことは想像に難くありません。

  それは、贈与は免除と違って単独行為でなく双方行為ですので、会社との意思の合致が必要であり、会社の行為が要求されるからです。

  税務上の各規定も私法上の効力を前提として機能するということですね。